コンサル・投資銀行で働く方であれば、入社1年目から毎日のようにエクセルと向き合い、効率的な使い方を叩き込まれます。一方で、例えば僕のように事業会社に営業職で就職した人間にとってはエクセルは「我流でなんとなく使う」程度でもなんとかなってしまうものです。
ただ、僕の場合2年目の途中に財務(管理会計)の部署に異動し、エクセルを使う機会が一気に増加しました。同時に、「営業の時どんだけ適当にエクセルを扱ってたんだ。。」と気づかされることに。
正直、コンサルや投資銀行への転職を検討してるのでもなければ「エクセルを完璧に使いこなす!」というレベルまでは必要ないと思うのですが、エクセルを使うにあたっての最低限のルールや基本的なテクニックは知っておいて損はないな、と思います。大企業の営業だとアシスタントさんもいるのでいいや、と思うかもしれませんが、財務・事業企画の部署への異動の際には絶対に必要となってくるので、要点だけでも掴んでおくべきだと思います。
この記事では、「とりあえずここだけは押さえとこう」というエクセルのルールやテクニック・小技を紹介するので、エクセルに自信のない若手ビジネスマンの方は、ぜひ目を通してみてください。
目次
エクセルの役割
エクセルが果たす役割をざっくり整理するとすると
- データの管理・蓄積
- データの加工・分析
といったところが挙げられます。
エクセルを共有状態にして、「●●の欄を皆さん埋めてください」みたいにリスト入力を求められることがありますが、これはデータを収集し蓄積する1の役割を担っていると言えます。そして、真の役割を発揮するのは、集まったデータを加工・分析する2の役割を果たす時です。
エクセルに慣れていない時にやりがちなのは「セルの結合」ですね。確かにぱっと見はセルを結合したほうが見やすい場面はあるのですが、データを加工する際には非常に邪魔になります。
エクセルに慣れてない方は、まずエクセルがデータを加工・分析する際に真骨頂を発揮するツールであることを認識するのが重要だと思います。
エクセルで守るべき基本ルール
そもそもエクセルはデータの管理・蓄積をする存在なので、営業部であっても、財務関係の部であっても引き継ぎの場面でよくやりとりされます。そういう時に非常に困るのが、エクセルの使い方がそれぞれ自己流なことです。営業部であればそれほど複雑なデータではないのでそれほど大きな問題にはなりませんが、財務の部にくると複雑怪奇なエクセルファイルになっており、しかもリンクを他の色々なエクセルファイルから引っ張ってきているので何が何やらわからないことも…。
なので、自分がエクセルファイルを作成・加工する際には「他の人にとってもわかりやすい」エクセルを作るよう心がけましょう。以下の記載する基本ルールは、そのためのチェックポイントだとご理解いただけるとありがたいです。
フォーマットの基本
フォーマットについては、所属するグループ・部で認識を揃えているものがあれば、それを活用しましょう。ない場合は自分でルールを設定する必要がありますが、代表的なものを例にあげると…
- 行の高さは18
- 文字サイズは10ポイントか11ポイント
- 数字のフォントは「Arial」。日本語は「MS P ゴシック」
- 数字はカンマで区切る
- 罫線の太さにメリハリをつける
- 縦の罫線は消去
- 横の罫線は薄い色で細く
- 文字は左揃え、数字は右揃えにして、縦線は使わない
- 薄い色で背景の色を変える
- デフォルトの枠線を白で塗りつぶして消す
などなど….。上記に関しては、僕ももともと意識できていなかった内容で、熊野整さんの「外資系投資銀行のエクセル仕事術」という著作に記載のあったものです。上記の箇条書き内の内容を意識するだけでもかなりエクセルの見栄えは変わると思いますが、より詳しく知りたい方は実際に「外資系投資銀行のエクセル仕事術」を読んで見るといいでしょう!
単位を記載する
小さなことのように思えますが、単位は非常に重要です。決算書などでもそうですが、記載してある数字の単位が違えば当然数字のインパクトは全く変わってきます。エクセルに落としてからデータを分析する際も、単位を補足的に明記し、いちいち出典元のデータを確認しにいく必要がないようにしましょう。
関連して、単位を千ごとに「カンマ(,)」を記載することを忘れないようにしましょう。例えば「10000000」なら「10,000,000」といった具合ですね。これは単純な見やすさとミス防止ですね。これは数字を扱う部署ならば基本中の基本なので、エクセルに限らずメールなどテキストで数字を記載する際も徹底するようにしましょう。
文字・数式を文字色で区別する
エクセルの数字の中には、値がそのまま入っているものと、数式の計算により値が表出しているもの、どちらもあると思います。これらはそれぞれ区別できないと、いじっていい部分なのかそうれない部分かの判断がつきません。
エクセル内で数式のセルの文字色は「黒」、値(ベタ打ち)の場合は「青」という風にルールを決めて、区別をつくようにしておきましょう。
文字色をそれぞれ何色にするかは、投資銀行でも会社によって違う場合があるらしいですよ。可能であれば所属するグループで統一しておけるとベストですね。
こまめにバックアップをとる
さて、こちらも癖付けておきたい内容です。エクセルを使った分析や加工を行う場合は、こまめにバックアップをとっておきましょう。特に、1日のうちで何回も数字が変わるようなエクセルファイルをいじっている場合は、後で手戻りが発生した際に絶対に必要になるのでよりこまめに意識しておく必要があります。
オススメは最新ファイルの他に「old」フォルダを作り、そのフォルダの中に保存日時・時間をな目に含んだエクセルファイルを保存する方式です。
また、数字を他のエクセルファイルから引っ張ってきているエクセルの場合は、元のエクセルの値が更新された際に合わせて数字が更新されてしまうケースがあるので、「その時点での数字」を保存したい場合はファイルのリンクを解除してから保存するようにしましょう。
エクセルで使いこなしたいテクニック
さて、次にエクセルで是非とも使いこなして欲しいテクニックについてご紹介します。もちろんここに書いてある内容はエクセルの機能・テクニックのうちほんの一部ですが、「へ〜こんなこともできるんだ〜」くらいに、まずは「どういうことがエクセルでできそうか」を知っておいていただければと。
ピボットテーブル
ピボットテーブルは、エクセルを使う上で絶対にマスターしておきたい機能です。情報が羅列された元データ(ローデータ)を集計・分析するためによく使われ、様々な切り口でデータをマーケター・コンサルの方であれば息をするように活用しているのではないでしょうか。
ただし、いくつかの指標を組み合わせて分析する際には、事前に仮説を作ってからピボットを組むようにしましょう。ピボットテーブルは一見それっぽい分析結果を抽出することができますが、よくよく見たらあまり意味のない分析をしてしまっている場合も多々あります。
コンサルでも、エクセルの分析テクニックは重要な一方で、本当に重要なのは最初の問題設定・仮説の筋であると考えられており、仮説を作っては検証…を繰り返すそうです。すぐにエクセルのローデータに向き合ってピボットを組むのではなく、まずは問題を整理し、仮説の幅出しをしっかりとするよう心がけましょう。
条件付き書式
条件付き書式は、エクセルを直感的に理解しやすくするために、任意の条件に沿った形でセルや行・列に色をつけたい時などに役立ちます。
「条件付き書式」ボタンはホーム画面の中から選択し、使うことができます。
例えば、『カラースケール』では、複数の値が含まれる範囲において、値の大小に応じて色をつけることができます。
また自分で条件を設定することも可能なので、状況に合わせてカスタムして使って見ましょう。
形式を選択して貼り付け
何気に一番使うショートカットかもしれません。特に使うのは「値貼り」をするタイミングです。数式によって値が計算されているセルを選択して別のセルにコピペする際、普通に「ctl + C」「ctl + V」で操作を行うと数式がそのまま貼り付けられてしまいます。これだと、引用元の数字が変動した時に合わせて値が変動してしまうので、不都合な場合があります。
そうではなく、計算「結果」を値として貼り付けたい場合は、「形式を選択して貼り付け」で「値」を選択して貼り付ければ問題ありません。全てをショートカットでこなすなら下記の通り。
ちょっと地味だけど使える小技
さて、ここからは個人的に感動した小技です。知っている人からしたら「いや誰でも知ってるよ」と思うかもしれませんが、初めて使う時には割と感動します。
検索・置換
数式の引用先を一気に変更する場合は、この検索&置換が非常に便利です。まず「ctl + f」で置換したい文字を検索、出てくるポップアップで「置換」を選択し、「置換後の文字列」で置き換えたいワードを入力して進めれば成功です。
プルダウンメニューの設定
リスト入力を複数名に依頼する際、いくつかの選択肢から選んで欲しい場面は多いでしょう。自由記述にする方が望ましい部分はあっても、こちらで選択肢を用意しておく方が後々の集計は楽になります。
手順としては以下の通りとなります。
入力内容が多い場合は、事前にエクセルシートに入力候補を縦に並べて入力しておき、上記の「4」においてその範囲を選ぶことも可能です。別にその入力候補を記載するためのシートを作っておくケースが多いですね。
ワークシートの移動・コピー
ワークシートのコピーは、個人的にめちゃくちゃ感動した小技です。エクセルの任意のシートを選択し、他のシートとの間にドラッグすると「▼」のマークが出ます。この状態でドラッグを解くと、シートがコピーされます。
また、ワークシートを他のエクセルファイルにコピーする場合は、下記の手順で簡単に進めることができます。
- コピーしたいシートを右クリックし、『シートの移動またはコピー』を選択
- 「移動先ブック名」で移動させたい先のエクセルファイルの名前を選択
- 移動の場合はそのままOK、コピーする場合は「コピーを作成する」にチェックを入れOK
いちいちシートの中身を全選択して移動させるより確実なので、上記操作はぜひ活用してみましょう。
処理の繰り返し
これは非常にシンプルなテクニックなのですが、何かしらの操作を行った後にF4を押すと、直前の操作が繰り返されます。例えば、任意の列に色をつけた後に、他の列を選択したのちF4を押すと、全く同じ色に列が塗りつぶされます。単純な操作を繰り返す場合はぜひ活用してみましょう。
関数はとりあえず『vlookup』
エクセルの関数としてよく名前の上がる「VLOOKUP」ですが、これを使いこなせるかどうかがエクセル初心者か、中級者か…という境目として見られることも。
=VLOOKUP(検索値, 範囲, 列番号, 検索の型)
なぜ中級者扱いされるかですが…おそらく、引数(関数に対して指定する必要のある情報)の数が多いことが理由の一つだと思います。SUM関数やAVERAGE関数などExcel初心者が使う関数は引数が少ないので、VLOOKUP関数を初めて見るときは抵抗感があるのでしょう。
ただ、VLOOKUPはコンサルや経営企画の部署だと使う機会が非常に多いです。理由は、分析する元となるデータ(ローデータ)から、必要となる情報を抜き出して見る時に有用だからです。
例えば、下記のようなリスト(出席番号・名前・性別)があり、出席番号をキーとして名前・性別を引き出す時は、VLOOKUPの出番です。
上記のようにVLOOKUP関数を使えば、出席番号を入力するセルの番号を任意に変えれば、それに紐づく名前・性別が抽出されます。列番号は、抽出したい数字が並んでいる列が『範囲内の何列目にあるか』をあるかを確認して3つめの引数に入力しましょう。
「検索の型」は一旦『FALSEにする』と覚えておきましょう。FALSEは「完全一致する値が無い場合はエラーを返す」という処理が行われます。
エクセルの時短テクニック
この記事を読み終わって「よし、エクセル頑張っちゃうぞ」と思った方にとはいえまず最初の最初にやってもらいたいのは「クイックアクセスツールバー」の設定です。なんのこっちゃ、という方も多いと思いますが…エクセルの上部のバーに各種ツール(=コマンド)を表示し、すぐに使えるようにするためのものです。行・列の挿入やピボットテーブルの作成などよく使うコマンドは、ここに配置しておいてすぐに使える用意しておくと手間が少なくひじょーーに便利です。
クイックアクセスツールバーの設定手順
クイックアクセスツールバーにコマンドを設定する手順は下記の通りです。
- [クイック アクセス ツール バーをカスタマイズします] をクリックし、[その他のコマンド] をクリック
- [コマンドの選択] ボックスの一覧で [[ファイル] タブ] をクリック
- コマンドを選んで [追加] をクリック
-
[OK] をクリック