「ビジネスマンが身につけるべきスキルは?」と訊かれた時、皆さんはソフトスキルとハードスキル、どちらを想像するでしょうか?僕の印象だと、特に若手のビジネスマンの方ほど「ハードスキル」、つまり英語力やプログラミングスキル、資格などを意識することが多いように思います。
「わかりやすいスキル身につけないと、この先の社会人人生不安だよね」なんて声を会社の同期との飲み会でもよく耳にします。
一方で、ソフトスキルは「ハードスキル」と違って定性的なスキルセット、具体的には「コミュニケーション力」や「誠実さ」などなど。ハードスキルが「英語力」や「会計」といった知識・定量的に測ることのできるスキルであるのに対し、ソフトスキルはいまいち定量化しにくいスキルです …。
ただ、企業の中で評価される為には実はハードスキルよりもソフトスキルの方が大事です。大企業だと特に、社員に与えられる仕事は一定のレベルで標準化されているので、ハードスキルはあまり活きてきません。どちらかというとハードスキルは「与えられる仕事の種類を変える」のに活用できることが多いですね(TOEICの点数が高い社員に優先的に海外駐在を任せる…みたいな)。
一方でソフトスキルは与えられた仕事を円滑に、質を高く進める為のもの。種類は様々ありますが、コミュニケーション能力に近しいものも多く、特に人とのやりとりが多分に求められる企業での仕事では特に大事になってきます。
目次
リクルート式のソフトスキル
ソフトスキルには様々な種類があり、また会社によって呼び方も違うので少し紹介が難しい部分があります。
ですので、ここではリクルートグループが社員のスキルアップについて会話する際に設定している6つのスキル・4つのスタンスに則ってご説明します。名称上スキル・スタンスと分けられていはいますが、そのどちらもが「ソフトスキル」と言えますので、合わせて10個それぞれを理解してみてくださいね。
※6つのスキルに関しては「見立てる力」「仕立てる力」「動かす力」の三つに分類されます。
見立てる力
見立てる力は「構造で捉え・俯瞰して見る力」と「分析的に捉え・問題を特定する力」の二つがあります。内容的には両者近しいものに見えますが、前者が「まず情報を集め、全体観を捉える力」で、後者が「より本質的な課題の特定と、定量的に分析を行う力」だと個人的には捉えています。
構造で捉え、俯瞰して見る力
構造で捉える・俯瞰で見る力は、「情報を収集する力」と集めた情報を「整理・優先順位付けする力」とに大まかに分けられます。クライアントや関係各所から情報を確実に集め、それらの知識を整理して課題を絞り込んでいくためのスキルですね。
分析的に捉え、問題を特定する力
特に財務・企画系の部署に移動したい方は、この能力は必須と言えるでしょう。もちろん、営業職の方でも一定の規模以上のクライアントを担当するならば、この能力は持っていないと質の高い提案はできません。
分析的に捉える、とは要は物事を「ロジックツリーのように見立てられるか」だと僕は個人的に考えています。例えば「売上を上げないといけない」と考えた時に、じゃあ売上を構成するのはどういった要素なのか、そのうちどの要素に着目して改善していくのか、を意思決定していくことができないと、自分自身でもどう動けばいいのかわかりませんし、関係者に取り組みの背景を説明することができません。
また、「分析に考える」ことと定量的に考えることはニアリーイコールです。「結構効果出てます」「売上がかなり悪くなっています」といったざっくりした伝え方が許されるのは、せいぜい新人の間くらいでしょう。物事を定量的に捉える癖・スキルはキャリアアップを考えるなら必須だと考えておきましょう。
仕立てる力
仕立てる力は「筋の良い打ち手仮説を立てる力」と「プロセスを作り込む力」の二つになります。
筋の良い打ち手仮説を立てる力
「見立てる力」であぶり出した課題を解決するための力…と考えるとわかりやすいでしょうか。正しく課題を解決するための、論理的に説明できる打ち手を設定するためのスキルですね。
ただし、この仮説を作る力は基本的に「量」「質」双方の掛け合わせです。仮説をいくつか作ってみた上でブラッシュアップ、質を高めていくことが大事であり、最初から「天才的なたった一つの仮説を作り出す能力」とは菅がないようにしましょう。その意味では、「納得感のある打ち手仮説」を作るための意思決定・合意形成を行うためのスキル…と考えるとよいかもしれませんね。
プロセスを作り込む力
「プロセスを作り込む力」は、個人・チームで取り組む施策どちらにおいても重要ですが、特にチームでプロジェクトを進める際にはとても重要になってきます。その意味では、プロジェクトリーダーの立ち位置にいる方だと、大きく求められるスキルですね。
ざっくりとこのスキルを内容を整理するならば
- 計画と目標の設定
- 役割分担
- 振り返りと修正
が要素に挙げられます。もともと個人でバリバリ営業に取り組んでた方が、よりチームとしての動き・数字の達成を求められ苦しむ時には、このスキルの向上が求められている…と言えますね。ただ、この能力は上司であるマネージャー・管理職の方が通ってきた道でもあるので、どうこのスキルを高めていくかに関しては、よりレイヤーの高い方に相談してみるのがよいでしょう。
動かす力
動かす力は「ビジョンを打ち出す力」と「人を理解し統率する力」の二つです。
ビジョンを打ち出す力
人は機械じゃないので、ビジョンを確実に伝えた上で業務をお願いしないと、動いてくれません。旧時代的なパワーマネジメントが中心の企業であれば「ビジョンなんて不要!とりあえず言われたことをやれ!」と言うかもしれませんが、今の時代にそぐってないのは、明らかですよね。
ビジョンを打ち出すには、自分自身が深くその施策の意義を理解していないとそもそもできませんし、浸透させるにも、繰り返し言い続ける必要があります。でも、そんないろいろな課題を超えてこそ得られる結果が確実にあるのもまた確かです。
人を理解し、統率する力
「ビジョンを打ち出す力」との関連性が強いこのスキルは、「関係者の人材理解と、動機付けをする力」と言えます。
ビジネスマンと言ってもみんな人ですから、それぞれのメンバーで思っていること、考えていることは違います。そんなメンバーの方向性を同じビジョンに向けて揃えるには、各メンバーをしっかりと理解し、ビジョンと各自の意向をすり合わせる必要があります。
ちょっと経験談を…僕が営業部に所属していた時、G内での営業PJのリーダーを任されました。しっかりと目標設定・役割分担をして(自分の中では)うなく進められていたように思ったのですが、新人がなかなか動いてくれずとても困りましたし、うまくプロジェクトの結果を出すことができませんでした。今思うと、「なんでこのプロジェクトってやるんだっけ?」と腹落ちするだけの接続を怠っていたからこそ、そういう結果になったんだと思います。
実際、営業リーダーと話をしていても現状課題感のあるスキルとして「人を理解し、統率する力」をあげる方が多かったです。
スタンス
ここからは、ビジネスマンとしての「スタンス」に関する4つの項目です。「スキル」という言い方はしませんが、内容は一般的なソフトスキルに近しいので、ソフトスキルとしてご説明しますね。
自分のこととして捉える(圧倒的な当事者意識)
パワーワードすぎてリクルート内でもよくネタにされがちな「圧倒的な当事者意識」ですが、ネタではなく特に重要なスタンスだと思っています。これはつまり、「物事を自分ゴトとして捉える」意識のことを言っています。
営業であっても、事業企画の仕事であっても開発側であっても、「CLにどうあって欲しいのか」「会社をどう成長させていきたいのか」など、自分個人の目線を大きく超えて物事を捉えられると、普段の行動は大きく変わります。「自分には関係のないコトだから」と仕事を選り好みしていたり、仕事への注力度を下げていたら、そこそこ以上の結果を得ることはできません。
圧倒的当事者意識を持つコツ
とはいえ、最初はどうやってその意識を持てばいいのかわかりにくい部分もありますよね。僕も新人の時、「圧倒的当事者意識」という言葉が寒気したのでしっくりきてなかったのですが…当時の上司にその悩みをぶつけたときに言ってもらったのが
「自分の一つ上の上司の立場で物事を捉えてみな。そうしたら当事者意識で考えられるようになるから。」
という言葉でした。当時僕は営業メンバーだったので、すぐ上の上司といえば、営業リーダー。僕たちはその分野の広告ポータルで業界No.1だったので、リーダークラスになるとただ売上をあげることだけでなく、「マーケットにどういう貢献をできるか」を本気で考えていました。
「関わるすべてのコトを自分の責任でやりきる」というのが圧倒的当事者意識だと個人的には思っていますが、より具体的にイメージする一つの方法として、「一つ上の立場の気持ちで考える」というのはオススメです。
誠実さ・正直さ(人望・信頼感)
「誠実さ」は非常に大事なソフトスキルです。というか、独立・起業したとしても何より重要になってきます。「いい人であれ」「カリスマであれ」というわけではなく…そもそもビジネスマンの仕事は基本的に1人では成り立ちません。アシスタントさんや庶務さんのように業務をサポートしてくれる方たちや、業務の前行程・後行程を担当してくれる方がいて成り立っています。
なので、
- 業務を納期内に終える
- 依頼は正確・丁寧に行う
といったことは、スキル・スタンスとして身につける必要があります。僕の会社でも、営業力が非常に高く若手営業マンからは非常に慕われている先輩がいましたが、アシスタント・協働する方への依頼が非常に短納期だったり乱暴だったりで、営業以外の方からの評判が芳しくなかった為になかなか新しい機会に恵まれない…ということも。
特に最近では「360度評価」など関係者からどう見えているか…を評価指標に加えている企業も多いので、社内でのキャリアアップを考えるならば、決して避けては通れないスキルだと考えないといけませんね。
やりぬく力
こちらは、仕事に取り組む上での「タフさ」と同義ですね。高い目標に対して最後まで取り組み続けること、考え続けるためのスキルです。
割と要領よく物事を進められる人ほど、苦しい中でもやり抜く・考え続けるのが苦手だったりします。心当たりがあるな…という方は、上司とも相談してより難しい課題にも取り組む機会を与えてもらうのも、一つの手かもしれませんね。
学び続ける力
一般的にビジネスマンの成長曲線は、まず業務の習得を通して大きく成長し、そのあと一度成長が止まります。そこからさらに成長できるか、学び続けられるかは、本人がどう仕事に取り組むか…にかかっています。
成長曲線が踊り場に立った時、更なる成長ができるかは、仕事をどう捉えるか…にかかっていると思います。ただ言われた業務を淡々とこなすだけでいいと考えるなら、それ以上の成長は必要ありません。でも、それだと面白くない、仕事に取り組む意味を感じない,,,と考えるなら、自分の仕事がどういう課題を解決していて、さらにどういうことが求められるのか?に関して周りにアドバイスを求めるといいでしょう。
ソフトスキルを転職時にアピールするには?
さて、ここまでソフトスキルをリクルート方式で説明しましたが、では実際に転職時にアピールするにはどうすればよいのでしょうか?
これに関しては、「結果で語るしかない」と思います。簿記一級です、TOEIC900点です…といったわかりやすい説明ができませんが。前職でどういったプロジェクトを遂行し、直面した課題にどう取り組んで、どんな結果を挙げたのか…を丁寧に説明すれば、その背景にあるソフトスキルは面接官に理解してもらえます。
もちろん、見立てる力などはそれまでに所属した企業の業種・職種で判断される部分もありますが、総合的なソフトスキルの質に関しては面接で伝える余地が十分にあります。ぜひ、現在務める企業で「ソフトスキルの向上」を意識して仕事に取り組んでみましょう。