【海外スタートアップ】スタートアップの資本管理サービス「Carta」とは?

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スタートアップ企業にとって、まずビジネスモデルのPDCAを回し、いかにユーザー数・売上を伸ばしていくかがまず主流になります。一方で、資金調達などの資本政策もとても重要な要素。投資銀行やコンサル出身者の方がスタートアップのCFOに就任するケースは散見されますが、彼らが担っているのはこの資本政策に関わる部分ですね。

その資本政策でまず大事なのは「資本構成」を明確にすること。未上場であれば資本構成が明確でないケースも多いのですが、資金調達の際には現状誰が会社の株式を所有しているのか、明確にしないといけません。それがないと経営陣も投資家側も交渉できませんからね。

通常は、下記のようなエクセルテンプレートに沿って、資金調達のたびに更新し一元化をする…というケースが多くなっています。

出展:東京スタートアップ会計事務所

ただし、まあ見ての通りやや旧時代的な管理になってしまいますし、会社によって使うフォーマットが異なる場合もあるので、こういった資本状況の管理に関しては各社課題感あるところです。

エクイティを簡単に。Cartaの提供価値

2012年に創業・2018年に評価額8億ドルで8,000万ドルの資金調達を行った『Carta』は、こういったスタートアップ企業の資本構成表や評価額の管理を助けるアメリカ・サンフランシスコ発のサービス。なかなかユーザーからは見えにくい「バックオフィス」部分を支援するという意味では会計サービスの『Freee』などが近いかもしれませんね。

Carta helps private companies, public companies, investors, and employees manage their cap tables, valuations, portfolio investments, and equity plans.

(訳)『Carta』は未上場企業・上場企業・投資家、従業員の方々がキャップテーブル(資本構成表)、バリュエーション(会社の評価額)、投資ポートフォリオ・エクイティ計画の管理を支援します。

サービスとしては、スタートアップ企業に限らず提供されていますが、個人的には「スタートアップのためのサービス」という一面が一番サービス上は魅力的に感じます。もちろん、上場企業の資本政策関連のインフラとなることも非常に重要な要素とはわかっているのですが、ちょっとベンチャーに関わったことがある身としてはどうしてもそう思ってしまいます。

そもそも資本政策はスタートアップにおいては優先順位が上がりにくいので、こういったサービスで簡素化すること、そしてある種フォーマット化(デファクト・スタンダード化)されることで経営者・投資家間での資本政策に関する議論がスムーズになることが期待できます。

Cartaのキャッチフレーズは「Equity.Simplified」。意味するところはざくっと「資本政策を簡素化しよう」というところですかね。

Cartaのサービス内容

既にいくつかについては触れましたが、Cartaのサービスは大まかに下記の各ターゲットごとにサービスを提供しています。

  • 未上場企業
  • 上場企業
  • 投資家

Carta 導入企業(未上場企業)

未上場企業向けサービス

まず、未上場企業に関しては上でも簡単に説明した通り、資本政策の簡素化が大きく掲げられています。活用している企業は10,000者以上、有名なところだと『slack』もCartaを活用しているようですね。

資本構成表の管理に関しては「キャップテーブルをスプレッドシートで管理するのはやめよう」というメッセージを掲げ、Carta上では下記のように管理できることをアピールしています(原文はこちら)。

Cartaでの資本構成表作成

また、Carta上で資本構成表を管理することで過去からの推移を簡単にレポート化することができるので、経営層からするとこれまでの資本政策を投資家に接続する際もほぼ労力をかけずに実現することができます。

企業価値 (409A Valuation)の算定

409A Valuation

企業価値は基本的に「株式数 × 株価」で決定するので、資本構成表を正しく作れていれば簡単に算定することができ、Carta上でもそちらを管理ができる形となります。

「409A Valuation」の『409A』はアメリカにおける企業価値算定プロセスとご理解ください。

トランザクション(キャッシュフロー)の確認

Carta transaction

資本に関する部分での価値提供が中心のCartaですが、transaction(売買取引量)、すなわちキャッシュフローに関わる部分に関しても管理が可能です。

上場企業向けサービス

Carta 導入企業(上場企業)

上場企業向けにも、同様にEquityに関する管理サービスが提供されますが、従業員による自社株式購入制度(ESPP)の管理などがメインとなります。Cartaを使う上での位置付けが、未上場企業の場合とちょっと変わってきますね。

参画企業数に関しては未上場企業と違って明記されていないので、上記の4社が現在導入中の企業なのかも?です。企業のバックオフィスで活用する管理システムなどは容易に変えられないことも多いので、そういった企業の「インフラ」となるのはより難易度が高いのかもしれませんね。

投資家向けサービス

Carta’s all-in-one platform offers fund administration, portfolio data collection and sharing, LP management, ASC 820 valuations, and free certificate safekeeping.

(訳)Cartaのオールインワンプラットフォームによって、ファンド管理・投資ポートフォリオの整理と共有・LP管理・企業の価値測定・預かり証保管が可能となります。

投資家向けのサービス内容は上記の通り、またプランには「Freeプラン」と「Premiumプラン」の2つがあり、Premiumプランだと全ての機能を活用することができます。

Cartaの投資家向けサービス画面

自身の投資先を一括で管理するにあたって、Cartaを使えば上記のようにジャンルやステージなどを分類しつつ整理できるので、わかりやすそうですね。

投資家向けサービスに関してもユーザー数などは公表されていないので、やはり「未上場企業」へのサービス提供がCartaの中心事業のようですね。

Cartaのマネタイズポイントは?

CartaはいわゆるSaasにあたりますので、法人の参画にあたって月額費用が発生する形と思われます。ただ、公式サイトでは固定の価格設定の記載はありません。

We work with every customer to find a price, plan, and solution that fit your business and structure.

(訳)全ての顧客に、それぞれのビジネス・構造に沿った価格、プラン、ソリューションでサービスを提供します。

価格に関する項目を確認すると、上記のような説明文とお問い合わせフォームへのリンクがありましたので、各社直接コンタクトをとって、必要機能等のすり合わせを行った上で価格が設定されるようです。

Cartaのの今後の戦略は?

Carta 公式サイト

2018年に8,000万ドルの資金調達を行い時価総額8億ドルとなったCartaですが、その資金を元にエクイティ管理の整備など、プロダクトの磨き込みに使うようです。上場企業・投資家向けのポートフォリオ管理に関しても言及はありますが、基本的には「未上場企業」の支援が主眼であることは変わらないようです。

※Cartaの過去の資金調達実績

引用:Crunchbase

Carta独自のデータは強みに

また、Cartaは参画企業を増やすことで、彼らの資本構成に関するデータを蓄積していく形になります。昨今のプラットフォームサービスは、そういった独自のデータを元にメディア事業を運営・マーケティングに活用するなどの動きが目立ちますが、Cartaも同様に、共同研究にてデータを活用したインサイトを公表しています。

TechCrunchより

上記のデータは、会社の株式所有者を「男女差」の観点から分析したもの。目に見えて女性の持つ割合が小さくなっていますね。

この調査は約6,000社のデータを元にしているとのことですが、参画企業数が増えれば増えるほど元となるデータも増え、より確からしいデータを確保することができそうですね。

日本でもCartaのようなサービスは生まれるか?

アメリカで順調にシリーズを上げているCartaですが、日本でも同様のサービスが生まれる余地はありそうと思います。課題感としては海外/国内で大きく差異が生まれるものではありませんし、やはりスタートアップの経営陣は全力でプロダクトの磨き込み・サービスのユーザー認知拡大に集中できているのが望ましいことは多くの経営者・投資家が同意するところでしょう。

また、競合観点でいっても企業価値査定などに関してはアメリカの会計基準がベースとなっているので、日本国内において同様のサービスを展開するにあたってはCartaを競合と捉える必要もなさそうですね。

データベースとしての役割がもっと増すと…?

これは非常に個人的な考えですが、企業やサービスの分析をする際、やっぱりスタートアップ企業って材料が少ないんですね。決算公告だけだと資産状況しかわからないことも多いですし、売上やコストの状況などは公開されていないケースも多いので、どうしても分析がふんわり・定性になりがちなんですね。

なので、会社ごとに公開範囲をある程度制限できる機能は必要と思いますが、「スタートアップのデータベース」として資本構成や、会社によっては売上やユーザー数といった目標指標を公開するような場になると、エンジェル投資家の方なども投資判断に活用できるサービスになるんじゃないかな?とちょっと思ったり。もちろん、競合観点で公開できないものには気をつかいながらにはなりますが。

「スタートアップ版の東証」みたいな場があると面白くないですか?字面だけみると意味わからないですけど(笑)

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